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2017年3月22日 (水)
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リンパ球バンクがANK免疫細胞療法のための培養センターを提供

東京--(BUSINESS WIRE)--(ビジネスワイヤ) -- 先進的ながん免疫細胞療法をサポートするリンパ球バンク株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役:藤井真則)が運営する細胞培養センターを利用し、ANK免疫細胞療法を提供する医師が、細胞培養を実施する医師らと共同で、3月7日から10日に東京で開催された、「第18回 国際ヒトレトロウィルスHTLV会議」で、ANK免疫細胞療法の治療経過を発表しました。



発表内容は、標準治療が確立していない難治性のATL成人T細胞白血病の患者9名に対して、ANK免疫細胞療法を用いたところ、症状の改善が見られ、長期生存例が得られている、というものです。

「第18回 国際ヒトレトロウィルスHTLV会議」での発表内容

今回、「第18回 国際ヒトレトロウィルスHTLV会議」で発表したのは、ATL患者が多い南九州で、臨床にあたる医師と、京都にあるリンパ球バンク株式会社の細胞培養センターを利用して、細胞培養の受託業務を行う医師ら3名。

内容は、ATL成人T細胞白血病9症例についての経過です。9症例のうち、4名は治療により症状改善後、3~7年が経過しご存命、1名は治療後6年間、再発もなく経過した後、ATLとは関係のない疾病で亡くなられ、4名はATLの急性化を止めきれなかったケースや、他の疾病等が原因で、治療途上で亡くなられています。

ATL成人T細胞白血病とは

ATL成人T細胞白血病は、HTLV-1型ウイルスの感染者のうち、生涯で数%が発症します。抗がん剤が奏効しにくく、奏効した場合も直ちに再燃し、抗がん剤投与後の平均余命は13ヶ月に過ぎません。骨髄移植が行われることもありますが、副作用が激しいため高齢者は治療できず、一方、患者の多くが高齢者です。標準治療が確立しているとは言えない難治性の高い疾病です。現状では、重篤なレベルに症状が進行するまで、補助的な治療以外は行われないのが一般的です。その点、一過性の発熱等はあるものの、強い副作用(副反応)が見られず、体力的に高齢者でも治療可能なANK免疫細胞療法が、もしATLの治療に有効であれば、患者さんや、ウイルスキャリアの方々にとって、朗報となります。

患者からの要請を受けて学会発表

ATL患者のお一人に、急性転化の兆しが現われ(添付図参照:腫瘍マーカーの推移)、ANK免疫細胞療法を通常の1クールの3分の2のみ実施したところ、症状が消失し、6年間、他の治療も受けずに、再発もなく、お元気に過ごされ、ATLとは関係のない他の疾病で亡くなられました。口コミ等で、患者さんが集まりましたが、これまでの治療経過をまとめて、学会などで発表して欲しいという患者さんや、ご家族の方々からの要請もあり、最初の患者さんを治療した南九州の医師が中心に、今回の発表となりました。

免疫細胞療法で白血病は治療できないと言われている理由

一般的に、免疫細胞療法では白血病を治療できないと言われています。理由は、白血病の場合、培養に用いられる細胞を血液から採取した時点でがん細胞が混入しますが、培養中に増殖した混入がん細胞を患者さんに戻すことに問題があるためです。研究目的で、混入がん細胞を洗浄除去した後に、免疫細胞を培養するケースはありますが、前処理を行わず、臨床上の実用レベルで、白血病を治療できる免疫細胞療法は見当たりません。

ANK免疫細胞療法の場合も、混入がん細胞があまりに多いと培養は無理ですが、あるレベル以下であれば、培養中にATL細胞を全滅させることも可能です。

ANK免疫細胞療法

患者さんご自身の血液を5~8リットル(延べ数量)、成分採血等に用いる装置で体外循環させ、血液に含まれるリンパ球を選別して、採りだします。その中のNK細胞を高度に活性化し、選択的に増殖させる技術。高度に活性化されたNK細胞は、がん細胞を傷害する爆弾のような小胞体を細胞内に大量に抱えるため、細胞分裂の際に爆弾が破裂し、自爆しやすい傾向があります。そのため、臨床上の実用として意味のあるレベルの活性化と増殖の両立は難しいとされてきましたが、京都大学の研究者2名がこの難題をクリアし、活性と増殖、両方の意味を込めて増強された=Amplified NK(ANK)と名付けました。この治療で進行がんを克服した患者と、研究者らが、2001年にリンパ球バンク株式会社を創業しました。

治療では、培養されたANK細胞を、点滴で体内に戻します。がん細胞を攻撃するのが本職のNK細胞の機能をそのままに、直接、がん細胞を傷害する上、大量の免疫刺激物質を放出することで、体内のNK細胞の活性化も促します。この時、放出される免疫刺激物質は、ほとんどが発熱を誘導する性質をもつため、点滴後、一過性ですが、悪寒や高熱などの副反応がでます。

免疫細胞療法の背景と特徴

強力な免疫刺激により、がんが消失することがある、あるいは、免疫抑制剤の大量投与により、がんが異常増殖する、といった様々な現象から、私たちの体内には、がん細胞を強力に傷害する免疫細胞が存在すると考えられてきました。1970年代、T細胞や樹状細胞、マクロファージ等は、既に知られていましたが、がん細胞への反応はそれ程でもなく、もっと強い細胞の探索が精力的に行われた結果、活性が高ければ、どのようながん細胞でも、出会ったその場で直ちに攻撃するリンパ球がみつかり、ナチュラルキラー(NK)細胞と名付けられました。がん細胞を認識する専用センサーを多種大量に備え、攻撃力も圧倒的に強く、体内の存在数も1000億個レベルと、非常に多いという腫瘍免疫の主役が発見されたのです。今日では、がん患者体内の、NK細胞は活性が低下しており、がん細胞の増殖を許してしまっていることが知られています。

米国国立衛生研究所(NIH)では、数十リットルという大量の血液からNK細胞を体外に採り出し、強く刺激してから3日以内に培養期間を制限し、患者体内に戻す免疫細胞療法の大規模臨床試験を実施、抗がん剤が奏効しないがん患者数百名全員に何らかの効果を示しました。3日以上培養すると、増殖に伴って、活性の高いNK細胞が自爆を起こしやすくなりますが、短期間の間に、大量の活性化されたNK細胞を体内に戻すと、大きな腫瘍が壊死を起こし、腫瘍内部のカリウム等が大量に放出され、心停止などのリスクがありました。そのため、治療はICUを占拠し、体液コントロールを行いながら実施され、非現実的なコストがかかり、実用化は無理でした。

NK細胞は培養が非常に難しく、活性を高めないと役に立ちませんが、増殖が始まると強い攻撃力ゆえに自爆を起こし易いという問題があります。京都大学の研究者二人が、米国法の限界を超えて、NK細胞の活性化と増殖を同時に実現するANK自己リンパ球免疫療法(ANK免疫細胞療法)を開発し、小規模な臨床試験を経て、一般診療を始めました。ANK免疫細胞療法1クールは、NK活性においても、NK細胞数においても、NIH法を上回るため、一度に体内に戻すと大きな腫瘍が壊死を起こすリスクがあります。そこで、培養細胞は凍結保管され、1クールを12回に分け、融解・再培養を行いながら、原則、週2回ずつに分割投与することで、クリニックへの通院治療が可能な安全性を確保しました。

ANK免疫細胞療法は、強い免疫刺激の結果として、国内で唯一、40度前後の発熱を伴います。

標準治療では、がん細胞が飛び散ってしまうと一般に予後不良です。体内に分散するがん細胞を追いかけ、一つずつ仕留めるNK細胞をがん治療に活用することは、進行がんの治療において重要な鍵を握ると考えられています。

 
【 リンパ球バンク株式会社の概要 】
○本社     東京都千代田区紀尾井町3-32 紀尾井町WITHビル 3F
○代表者

代表取締役会長 勅使河原 計介、代表取締役社長 藤井 真則

○資本金 8550万円
○設立 2001年1月 京都大学発ベンチャーとして設立
○事業内容     ANK自己リンパ球免疫療法総合支援サービス
 
○企業理念
リンパ球バンク株式会社は、ANK免疫細胞療法を開発した医師と治療を受けた患者を中心に創業され、経営している企業です。
一人でも多くのがん患者にとって治療の選択肢が広がる状況を築いていきます。
科学的根拠に基づいたオーソドックスな考え方で治療システムを開発・提案します。
高度で複雑な生命システムを謙虚にみつめ、細胞加工技術や免疫制御技術を過信せず、細胞本来がもつ能力をありのまま引き出すことを工夫します。
がんの予防や治療における免疫の重要性への認知を広めることで、免疫細胞療法が社会システムに組み込まれ、より多くの患者が治療を受けられる機会を広げます。


Contacts

【本件に関するお問い合わせ先】
リンパ球バンク株式会社
担当:斎野千栄子
TEL 0120-51-2251
〒102-0094 東京都千代田区紀尾井町3-32
e-mai : ly-seminar@lymphocyte-bank.co.jp
https://www.lymphocyte-bank.co.jp/

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